天妃物語〜本編後番外編・帰ってきた天妃が天帝に愛されすぎだと後宮の下女の噂話がはかどりすぎる〜
「お前が愛しているのは俺だけだと思いたいものだ」
「もちろん、あなたを愛していますよ」
「あれを想いながら?」
「私にとってかけがえのない存在です。愛していますから」
鶯が黒緋を見つめながらも、ここにはいない誰かを愛おしげに語った。
瞬間。
((((((――――っ!!??))))))
士官や女官たちに緊張が走った。
天妃が堂々と天帝以外にも愛していると言ったのだ。
士官や女官はしずしずとした顔をしながらも内心は大混乱だ。
(え、ええっ? どういうこと? 天妃様の想い人は天帝も公認してるっていうこと!?)
(天妃様、素直に答えすぎよ〜!)
(ちょっと待って、ということは二人の殿方が天妃様を……? しかも天帝公認っていうことは、二人の殿方で天妃様を愛する夜もあるっていうこと!? キャーーー!!)
(ああ、恐ろしい恐ろしいっ。その地上の人間、天帝の逆鱗に触れているんじゃないのか?)
(地上に天罰が下るぞ……っ。地上のその男、死んだな……)
(天妃様に愛されるなんて羨ましすぎる……っ)
士官と女官は今にも内心叫びだしたい気持ちになっていたが、もちろん表情には一切出さない。天帝と天妃と二人の御子に従順に仕えるのみ。
「鶯、お前があれを愛する気持ちも分かるが……」
黒緋が少し憂えたように言った。
((((((分かるんだ!)))))))
今や士官や女官たちの気持ちは一つになっている。
天妃が天帝公認で浮気をしているという前代未聞の事態が起こっているのだから。
士官や女官がしずしずと控える中、天帝と天妃の会話が続いていく。
「よく物憂げな顔で地上を見ているそうだな。空いた時間があれば神域の森に入っていくと聞いたぞ。そんなに地上が気になるか?」
「地上の安寧を祈っています。……もしかして、ご迷惑でしたか」
「そういうことじゃない。天妃のお前が地上に想いを寄せることは否定しない。むしろ喜ばしいことだと思っている」
それは黒緋の本心だ。
天帝と天妃の神気は地上の人々に平穏を与え、大地に豊穣をもたらす。人間にとって天帝と天妃とは神という存在。天帝の神気は灼熱の太陽のごときもの、それに寄り添う天妃の神気は木漏れ日のような慈愛に満ちたもの。
以前は黒緋のほうが地上を大切に思っていたが、帰ってきた天妃はそれに劣らぬ気持ちを地上に寄せていた。日々の安寧を慎ましく願う人間の祈りに耳を傾け、慈愛の心でそれに寄り添っているのだ。それは天帝の妃としてあるべき姿だが、黒緋はどうしても言いたいことがある。
なぜなら天妃は地上を愛しつつも、その中に特に愛している存在がいるのだから。
「もちろん、あなたを愛していますよ」
「あれを想いながら?」
「私にとってかけがえのない存在です。愛していますから」
鶯が黒緋を見つめながらも、ここにはいない誰かを愛おしげに語った。
瞬間。
((((((――――っ!!??))))))
士官や女官たちに緊張が走った。
天妃が堂々と天帝以外にも愛していると言ったのだ。
士官や女官はしずしずとした顔をしながらも内心は大混乱だ。
(え、ええっ? どういうこと? 天妃様の想い人は天帝も公認してるっていうこと!?)
(天妃様、素直に答えすぎよ〜!)
(ちょっと待って、ということは二人の殿方が天妃様を……? しかも天帝公認っていうことは、二人の殿方で天妃様を愛する夜もあるっていうこと!? キャーーー!!)
(ああ、恐ろしい恐ろしいっ。その地上の人間、天帝の逆鱗に触れているんじゃないのか?)
(地上に天罰が下るぞ……っ。地上のその男、死んだな……)
(天妃様に愛されるなんて羨ましすぎる……っ)
士官と女官は今にも内心叫びだしたい気持ちになっていたが、もちろん表情には一切出さない。天帝と天妃と二人の御子に従順に仕えるのみ。
「鶯、お前があれを愛する気持ちも分かるが……」
黒緋が少し憂えたように言った。
((((((分かるんだ!)))))))
今や士官や女官たちの気持ちは一つになっている。
天妃が天帝公認で浮気をしているという前代未聞の事態が起こっているのだから。
士官や女官がしずしずと控える中、天帝と天妃の会話が続いていく。
「よく物憂げな顔で地上を見ているそうだな。空いた時間があれば神域の森に入っていくと聞いたぞ。そんなに地上が気になるか?」
「地上の安寧を祈っています。……もしかして、ご迷惑でしたか」
「そういうことじゃない。天妃のお前が地上に想いを寄せることは否定しない。むしろ喜ばしいことだと思っている」
それは黒緋の本心だ。
天帝と天妃の神気は地上の人々に平穏を与え、大地に豊穣をもたらす。人間にとって天帝と天妃とは神という存在。天帝の神気は灼熱の太陽のごときもの、それに寄り添う天妃の神気は木漏れ日のような慈愛に満ちたもの。
以前は黒緋のほうが地上を大切に思っていたが、帰ってきた天妃はそれに劣らぬ気持ちを地上に寄せていた。日々の安寧を慎ましく願う人間の祈りに耳を傾け、慈愛の心でそれに寄り添っているのだ。それは天帝の妃としてあるべき姿だが、黒緋はどうしても言いたいことがある。
なぜなら天妃は地上を愛しつつも、その中に特に愛している存在がいるのだから。