愛を語るより…
そして、決まった約束の日の朝。
前日の夜から、私は一応この日の為にと買った一揃えの洋服等を含め、あれやこれやとクローゼットから服やコートや様々なコーディネートを考える為に、部屋をごたごたにして、結局、赤のリブニット膝丈ワンピースに、ファー付きホワイトコート、其処に黒の編み上げロングブーツを合わせ、クリスマスっぽくしてみた。
少しでも、彼に可愛いと思って貰えたらいいなとか、でも退かれたらどうしようとか思いつつも、やっぱりコレ!と一目惚れしたコーデを見て貰いたい気持ちの方が強かったから…。
髪は何時も一束にまとめている物をハーフアップにしてから、緩く巻いて何時もよりも甘めに仕上げた。
そこに、ピンクブラウン系のメイクを施し、鏡を見つめる。
「よし、これなら大丈夫…かな?」
最終チェックを玄関の姿見でしっかりとして、必要最低限の物が入るカバンを手にしてから、部屋から出た。
逢うまでは、やっぱり褒めて貰えなかったら、という気持ちの方が大きくて、下を向きがちだったけれど…。
落ち合ってから直ぐに彼は、私の格好を少しばかりジッと見つめた後、まるで感嘆の溜息を吐くようにして、少しだけ頬を染めた。
その様子が何を示すのか分からなくて戸惑っていると、ハッとしたように彼はまた私に目線を合わせてから、
「可愛い。凄く似合ってるね」
と、会社では絶対に見せないような蕩ける微笑みで、私の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
そんな彼は、モノトーンコーデでビシリとキマっていて、道行く女の子達の視線を沢山集めている。
それに対して、モヤモヤっとしたヤキモチ。
また、下を向きそうになった私の手をまたにぎにぎと掴んで、耳打ちをして来た。
「さて。これ以上、他の男の視線を君に集めたくないから、行こうか」
「…っ?!」
私の気持ちをしっかりと分かってるとでも言うように、彼は掴んだままの私の手を何時の間にか恋人繋ぎに絡め取り、エスコートし始めた。
私はドキドキと高鳴る胸の鼓動を、どうにか抑え込んで彼の隣を歩いた。
彼に聞きたいことは、いっぱいある。
私を好きって言うのは本当なのかとか、それは何時からなのか、とか…。
私なんかの何処がいいのか…等々疑問は絶えない。
でも、チラリと盗み見た彼の顔が、凄く楽しそうでそんなのは私の杞憂なのかもしれないとか、ぐるぐるしていた。
そして、歩く事数分。
付いたのは、公園の駐車場で。
…わぁ、此処からもこんな風に綺麗な夜景が…イルミネーションが見えるんだぁ…。
なんて、呑気に思っていた私を、彼はふっと笑ってから、ぐっと引き寄せてくる。
「佐伯さん…ねぇ…このまま君を離したくないって言ったら、君はどうする?」
「…え?」
「もっと、綺麗な夜景を見せたいんだ」
白い息の中に、吐息を混ぜたような甘い声。
テノールに響くそんな声は、今まで一度も聞いた事のない程、私の心を震わせて。
その言葉の意味が分からない程、子供ではない。
高揚して声にならない自分の気持ちを、私はただ伝えるようにこくりと頷いた。
直感的に欲しいと、思ったのだ。
私を映す綺麗なチャコールグレーの瞳が。
手袋越しではあるけれど、彼の熱い温度が。
本能的に、心の底から欲しいと思った。
だから、恥じらいも忘れて彼の手の内に、自ら堕ちた…。
前日の夜から、私は一応この日の為にと買った一揃えの洋服等を含め、あれやこれやとクローゼットから服やコートや様々なコーディネートを考える為に、部屋をごたごたにして、結局、赤のリブニット膝丈ワンピースに、ファー付きホワイトコート、其処に黒の編み上げロングブーツを合わせ、クリスマスっぽくしてみた。
少しでも、彼に可愛いと思って貰えたらいいなとか、でも退かれたらどうしようとか思いつつも、やっぱりコレ!と一目惚れしたコーデを見て貰いたい気持ちの方が強かったから…。
髪は何時も一束にまとめている物をハーフアップにしてから、緩く巻いて何時もよりも甘めに仕上げた。
そこに、ピンクブラウン系のメイクを施し、鏡を見つめる。
「よし、これなら大丈夫…かな?」
最終チェックを玄関の姿見でしっかりとして、必要最低限の物が入るカバンを手にしてから、部屋から出た。
逢うまでは、やっぱり褒めて貰えなかったら、という気持ちの方が大きくて、下を向きがちだったけれど…。
落ち合ってから直ぐに彼は、私の格好を少しばかりジッと見つめた後、まるで感嘆の溜息を吐くようにして、少しだけ頬を染めた。
その様子が何を示すのか分からなくて戸惑っていると、ハッとしたように彼はまた私に目線を合わせてから、
「可愛い。凄く似合ってるね」
と、会社では絶対に見せないような蕩ける微笑みで、私の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
そんな彼は、モノトーンコーデでビシリとキマっていて、道行く女の子達の視線を沢山集めている。
それに対して、モヤモヤっとしたヤキモチ。
また、下を向きそうになった私の手をまたにぎにぎと掴んで、耳打ちをして来た。
「さて。これ以上、他の男の視線を君に集めたくないから、行こうか」
「…っ?!」
私の気持ちをしっかりと分かってるとでも言うように、彼は掴んだままの私の手を何時の間にか恋人繋ぎに絡め取り、エスコートし始めた。
私はドキドキと高鳴る胸の鼓動を、どうにか抑え込んで彼の隣を歩いた。
彼に聞きたいことは、いっぱいある。
私を好きって言うのは本当なのかとか、それは何時からなのか、とか…。
私なんかの何処がいいのか…等々疑問は絶えない。
でも、チラリと盗み見た彼の顔が、凄く楽しそうでそんなのは私の杞憂なのかもしれないとか、ぐるぐるしていた。
そして、歩く事数分。
付いたのは、公園の駐車場で。
…わぁ、此処からもこんな風に綺麗な夜景が…イルミネーションが見えるんだぁ…。
なんて、呑気に思っていた私を、彼はふっと笑ってから、ぐっと引き寄せてくる。
「佐伯さん…ねぇ…このまま君を離したくないって言ったら、君はどうする?」
「…え?」
「もっと、綺麗な夜景を見せたいんだ」
白い息の中に、吐息を混ぜたような甘い声。
テノールに響くそんな声は、今まで一度も聞いた事のない程、私の心を震わせて。
その言葉の意味が分からない程、子供ではない。
高揚して声にならない自分の気持ちを、私はただ伝えるようにこくりと頷いた。
直感的に欲しいと、思ったのだ。
私を映す綺麗なチャコールグレーの瞳が。
手袋越しではあるけれど、彼の熱い温度が。
本能的に、心の底から欲しいと思った。
だから、恥じらいも忘れて彼の手の内に、自ら堕ちた…。