愛を語るより…
彼は、駐車場に止めてあった、白のレクサスへと私を導き、その助手席にスマートにエスコートをしてくれる。

そして、自分が運転席に乗り込むと、スッと私に近寄ってくる。


「、あ…っ」

「シートベルト締めてあげる」


思わずキスをされるのかと思って、変な声が出そうになった私は、スマートにシートベルトを付けてくれた彼の前髪がふわりと首筋に当たった事にもびっくりして、今度こそ確実に変な声を上げてしまった。

それが恥ずかしくて、口唇を少し噛んで声を押さえ込む。


「〜〜〜っ」

「さ…香帆ちゃんは、本当に可愛いな」

「…っ?!な、名前…」

「二人だけの時だから…ねぇ?許してくれる?」


その、甘い甘い蕩けるような笑顔と、少し楽しげに弾んだ声に、私は陥落してしまい、小さな声で、いいですよ…とだけ言った。

すると、んー?と暫く思案した主任は、もう一度私の方を見てから、


「じゃあ、香帆ちゃんも、俺の名前を呼んでくれる?」


なんて、とんでもないことを口に出してきた。


「っ?!な…な、」


そう言いながら、顔を真っ赤にして後退りそうになる私を射抜くように見つめる熱い視線。


身が、心が、焼き切れそう…。


ドキドキと煩い鼓動をなんとか胸に手をやることで押さえて、私は震える声で囁く。


「桐島さん…?」

「ふふ、違うよ、下の名前で…ね?」

「…っ。あ、蒼さ、ん………」


恥ずかしくて、ぎゅっと手を握りしめようとすると、それを溶かすように、すりすりと手の甲をなぞられる。


「なぁに?」

「……その顔、は……ず、ずるい…」


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