君と2度目の恋に落ちたら

第1章 ささやかな日常

母が用意してくれたトーストとサラダを食べながら、リビングでついているテレビに映るニュースをただ眺めるように見ていた。時刻は7：27、朝食を食べあげて残りの身支度を完了させれば、いつも通りの時刻には家を出て登校ができる。私は母に似て朝は苦手ではない。だけど...

「お父さん！早く起きないと会社に遅刻するわよ！」

母の声がリビングまで聞こえてきた。私の父はかなり朝が弱い人だった。

私が朝食を食べあげ、食器を下げようと立ち上がった頃、父が慌ててネクタイを結びながらリビングに駆け込んできた。

「ゆ、ゆりあ、おはよう！」

「おはよう、お父さん。急がないと電車に間に合わないね」

「お父さんったら、どうしてこんなに声をかけてもなかなか起きれないのかしらね〜」

「すまない、母さん...」

遅刻してしまうかもしれない状況の中でも父は母が用意した朝食をかき込む。「遅刻しそうな時でもどうして朝食を抜かないの？」と以前聞いたことがあるが、父は「母さんが用意してくれたものを残すなんて、俺にはできないよ」とデレた顔で答えた。

私の両親はとても仲がいい。母も父のことを大切に思っているのは娘の私が見ていてもよくわかるし、父は母以上に母のことを大切にしている。そして、そんな両親は一人娘の私のことをとても大事にしてくれている。とても恵まれた環境であると思う。

バタバタと支度をする父を尻目に、私が身支度を完了させた時刻は7：38。自宅から学校はそう離れてはおらず、徒歩で10分ちょっと歩けば着くことができる。私は慌てることなく通学用のリュックに腕を通し、玄関のドアに手をかけた。

「じゃあ、いってきます」

両親にそう声をかけると、2人ともリビングのドアから顔を出して私に笑顔で「いってらっしゃい」と言った。玄関を出てドアが閉まりかかった頃、父の「車には気を付けるんだぞ！」という声が聞こえてきた。私は毎日毎日同じことを言うなあと思い、笑いながら「はーい」と締まりのない返事をした。