君と2度目の恋に落ちたら
私の住む町は田舎だ。しかし、田舎といっても生活に困ることはないくらいにはお店もあり、電車に乗って少し行けば大きなショッピングモールもある。徒歩だけでは不便な面もあるので、この町は車社会である。車道では通勤の車が多く行き交っているが、私の通学路は歩道もきちんとあるので問題はない。

この後、父もこの先にある駅に向かうため自転車でこの道を行くだろう。父は数年前まではこの町にある会社に通勤していたが、出世して電車で数駅先の本社勤務になった。車で通勤もできるだろうにと疑問に思ったこともあったが、父曰く会社のある場所はこの町よりも都会で、通勤の時間帯は渋滞が起こるそうだ。早起きができない父がその渋滞に巻き込まれると遅刻する可能性が高いらしく、電車で行って駅から自転車で行った方が間に合うのだという。なんとも父らしい理由だった。

学校までの道のりを歩いていると、少し先の角から見慣れた姿が出てくるのが見えた。私はその姿を捉えてから少し足早に進み、その人物に声をかけた。

「もか!おはよう!」

「あ、ゆりあ〜!おはよう〜」

彼女の名前は柏原もか。もかは小学生の頃からの幼馴染みであり親友である。この春から私たちは同じ高校に進学し、クラスも一緒になり、学校生活ではいつも行動を共にしている。

「今日の数学の小テスト、マジでヤバイかもしれないわ〜」

もかは肩を落としながら今日予定されている数学の小テストのことを嘆いた。数学の小テストや定期試験の度にもかはこのように嘆いているような気がする。数学は苦手かつ嫌いなんだそうだ。

「もかっていつもそうやって言うけど、なんだかんだ赤点とったりしないじゃん」

苦手でも嫌いでも真面目な性格の彼女はきちんと勉強をしているので、なんだかんだで中学の頃から赤点を取るようなことはなかった。しかし、今回はなんだか様子が違うようで、もかはもじもじしながら不安のわけを話した。

「いや〜...ね?昨日は勉強せずに彼氏とずっと通話しちゃってたんだよね〜、あはは〜...」

「なんだそれ、惚気〜!?知らないし!」

私は呆れた言葉を発しながら笑った。私に訳を話したもかは耳が赤くなっていた。もかは高校に入学して入った吹奏楽部で出会った同級生の青木くんという男の子とつい最近付き合い始めたのだ。とても初々しく、彼氏の話をするときは毎回耳を真っ赤にさせている。
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