お菓子に釣られたシンデレラ 王女様の命令で私が王太子様と恋愛結婚!?
「おいしーい♡」
「そうか」
「はいっ! 豚肉の甘辛いタレがクセになります! 挟んでいるパンももちもちで最高です!」
私は今、王太子殿下と護衛の騎士様二名と屋台で食事をしている。先程何を食べたいか尋ねられて、空腹だった私は目の前の屋台を指定した。
目論見通り、おじさんが注文してすぐに商品を提供してくれて、こうして美味しい豚肉サンドをいただいている。
「ご馳走してくださってありがとうございます!」
「ぶつかってしまった詫びだ」
「ほっかほかのあたたかい食べ物は美味しいです! ぶつかって得しました!」
「……! そうか」
ちなみに食事をしているのは私だけ。さすがに王太子殿下が、毒味もせず屋台料理を召し上がるわけにはいかないのだろう。なんて損なお立場! 同情します。ホクホクの豚肉は甘辛だれで味付けされ、白いふかふかのパンに挟まって、食べ応えのある一品に仕上がっている。屋台のおじさま、良い仕事してますね。
しかし、極上の豚肉サンドを頬張る私に、予期せぬ事態が起こった。
「私にも一口分けてくれ」
「!?」
何を言われたか理解する前に、見目麗しいお顔が近づいてきて、私の豚肉サンドにムシャッとかぶりついたのだ。
「!!」
「うん。確かに美味いな」
私の……豚肉サンド……。召し上がった!?
王太子殿下は人の食べかけを召し上がる癖があるのかしらと無理矢理納得しようとしたが、護衛の方々も驚いた顔をしている。
「な、な……」
「悪い。あんまり美味しそうに食べるから、味が知りたくなった」
口元についた甘辛タレを、ご自身の手で拭いながら少しはにかむ王太子殿下。顔がいいとどんな仕草も格好良く見えるから不思議だ。
しかし、私の食事を奪った罪は重い。私はもう一口も渡さないと心に決めて、隙を与えぬよう黙々と食べ切った。
「ごちそうさまでした!」
「見事な食べっぷりだった」
「食事は大好きですので。代金は本当にお支払いしなくて良いのですか?」
「いい。ただ……」
「ただ?」
「また、会えるだろうか」
王太子殿下のルビーのような瞳がきらりと輝いた気がした。
その意志の強い瞳がシャーロット殿下と重なる。
(そうだわ。シャーロット殿下の無理難題はお断りしたい。だったらもうお近づきになるべき方ではないわ)
「この御恩は、我が国のため必死に働くことでお返しいたします。王太子殿下にお目にかかれて光栄でした。ありがとうございました」
「!」
「失礼いたします!」
私は誠心誠意お礼をお伝えし、その場から逃げるように立ち去ったのだった。
「そうか」
「はいっ! 豚肉の甘辛いタレがクセになります! 挟んでいるパンももちもちで最高です!」
私は今、王太子殿下と護衛の騎士様二名と屋台で食事をしている。先程何を食べたいか尋ねられて、空腹だった私は目の前の屋台を指定した。
目論見通り、おじさんが注文してすぐに商品を提供してくれて、こうして美味しい豚肉サンドをいただいている。
「ご馳走してくださってありがとうございます!」
「ぶつかってしまった詫びだ」
「ほっかほかのあたたかい食べ物は美味しいです! ぶつかって得しました!」
「……! そうか」
ちなみに食事をしているのは私だけ。さすがに王太子殿下が、毒味もせず屋台料理を召し上がるわけにはいかないのだろう。なんて損なお立場! 同情します。ホクホクの豚肉は甘辛だれで味付けされ、白いふかふかのパンに挟まって、食べ応えのある一品に仕上がっている。屋台のおじさま、良い仕事してますね。
しかし、極上の豚肉サンドを頬張る私に、予期せぬ事態が起こった。
「私にも一口分けてくれ」
「!?」
何を言われたか理解する前に、見目麗しいお顔が近づいてきて、私の豚肉サンドにムシャッとかぶりついたのだ。
「!!」
「うん。確かに美味いな」
私の……豚肉サンド……。召し上がった!?
王太子殿下は人の食べかけを召し上がる癖があるのかしらと無理矢理納得しようとしたが、護衛の方々も驚いた顔をしている。
「な、な……」
「悪い。あんまり美味しそうに食べるから、味が知りたくなった」
口元についた甘辛タレを、ご自身の手で拭いながら少しはにかむ王太子殿下。顔がいいとどんな仕草も格好良く見えるから不思議だ。
しかし、私の食事を奪った罪は重い。私はもう一口も渡さないと心に決めて、隙を与えぬよう黙々と食べ切った。
「ごちそうさまでした!」
「見事な食べっぷりだった」
「食事は大好きですので。代金は本当にお支払いしなくて良いのですか?」
「いい。ただ……」
「ただ?」
「また、会えるだろうか」
王太子殿下のルビーのような瞳がきらりと輝いた気がした。
その意志の強い瞳がシャーロット殿下と重なる。
(そうだわ。シャーロット殿下の無理難題はお断りしたい。だったらもうお近づきになるべき方ではないわ)
「この御恩は、我が国のため必死に働くことでお返しいたします。王太子殿下にお目にかかれて光栄でした。ありがとうございました」
「!」
「失礼いたします!」
私は誠心誠意お礼をお伝えし、その場から逃げるように立ち去ったのだった。