お菓子に釣られたシンデレラ 王女様の命令で私が王太子様と恋愛結婚!?
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 私の実家であるリントン伯爵家は、伯爵とは名ばかりで、とっても貧乏だ。

 母は幼い頃亡くなり、父は多額の借金を残して行方不明。失踪直前に父が再婚し、やってきた後妻の義母と義姉は我が者顔で伯爵家で暮らしている。そして彼女達は、あっというまに伯爵家の財産を食いつぶしてしまった。

 最初はそれでも何とかやりくりしようともがいていた。経理を勉強し、税収を計算し、支出を抑えて維持しようと試みた。我が家の家財を売り払い、母の形見以外は手放した。
 だが、二年前の大災害で領地の作物は全て不作。王都へと繋がる街道も土砂崩れで塞がり、復旧に多額の金額がかかることになり、首が回らなくなっていった。

 国の支援で、災害の復興はなんとか遂げたものの、義母や義姉は金遣いが荒く、父が残した借金の返済もあって、伯爵家は困窮してしまった。

 執務室で頭を抱えていたところに、ノックもなく突然入室してきたのは義母。その日も趣味が悪いと感じるほど飾り立てた姿で、夜会に出ても余裕で目立ちそうな派手派手しい格好だった。そんな義母が、薄く笑みを浮かべながら、「良い考えがあるの」と言い出した。嫌な予感がしながらも「何でしょうか」と聞いてみる。

「あなた、王宮で使用人をしていらっしゃい」
「え?」

 思いがけない提案だった。

 この家は私が居ないと回らないからだ。
 使用人の給金も払えなくなり、最低限の人数となった今、朝から私は家事労働をしている。さらに領地経営も全て私に任されており、執事と協力してなんとかこなしているのだ。
 私が王宮に仕えている間、この人たちがやってくれるとは思えない。

 ぽかんと思考停止していると、真っ赤な唇を歪ませて義母が激昂した。

「働いてお金を稼ぎなさいと言っているの! うちが貧乏になったのは、貴女のせいでしょ! 大雨の復旧なんて放っておけば良いのにお金を沢山使うからじゃない! ドレスも買えやしない!」

 私はそれを聞き流しながら、私がこの家を出てもどうにかなるか考えていた。

 領地のことは執事に一任し、判断に迷うことは私に手紙を書いてもらうことで何とかなる。家事は回らなくなるかもしれないが、義母や義姉が自覚を持って手伝ってくれるきっかけになるかもしれない。

「出来れば資産がたっぷりある貴族の殿方と顔見知りになって、ジュリアに紹介しなさいな。いい? 貴女はお金を稼いできなさい!」
「分かりましたわ。お義母様」

 義母や義姉から使用人扱いされる毎日にも飽きていたし、お金がなくて芋ばかりの食生活に絶望していたところだった。私は食生活の改善にワクワクしながら、王宮侍女の募集に飛びついたのだった。

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