お菓子に釣られたシンデレラ 王女様の命令で私が王太子様と恋愛結婚!?


 結論から言おう。
 王宮は天国だ。パラダイスだ。だって、ご飯が死ぬほど美味しい!

 使用人向けの賄いでも、我が伯爵家が豊かだった頃の食事よりも豪華で美味だ。借金を抱えてからは芋ばかり食べていたので、尚更ここの生活は最高だと思えた。義母や義姉には申し訳ないけれど、美味しいものをたくさん食べることが出来て幸せだ。

 侍女や使用人達は、王宮の端にある食堂で食事をとる。今も王宮侍女の先輩達と豪華なランチをいただいている。今日の日替わりランチは、新鮮なトマトソースのパスタとサラダ、黄金に輝くコンソメスープだ。私はフォークにたっぷりパスタを巻いて、豪快に頬張る。パスタに添えられていた瑞々しいバジルの香りが鼻に抜け、フレッシュなトマトの風味がパスタと絶妙に絡まり合ってたまらなく美味しい。ああ、口の中が幸せ……!

「んんー♡ おいひいです!」
「アナベルは本当に美味しそうに食べるねえ」
「ほんほおにおいひいれすもん」
「こらこら。淑女が口に物を入れたまま喋るでないよ」

 侍女になりたての頃、食堂で初めて王宮のごちそうをいただいた時、あまりの美味しさに感動して泣いてしまった。その現場を目撃した王宮勤めの皆さんは、私が余程貧乏なのだと察してか、とても優しく接してくれるようになった。
 今では料理人の方々や給仕係のメイドの皆さんと親しくなり、余り物を恵んでもらったり、休憩時間のおやつを分けていただくこともある。もちろん、こうして休憩時間には王宮侍女の先輩方と美味しいランチもいただいている。
 つまり、私の食生活は大いに改善され、私は大充実の毎日を送っている。王宮は最高の職場だ!

「しかしアナベルがこんなに出世するなんてね」
「そうそう! まさか王女殿下の専属侍女に選ばれるとは思ってなかったわ〜」
「私も予想外でした〜もぐもぐ」
「だから食べながら喋らないの!」
「は〜い」

 王宮侍女の先輩達がしみじみと私の出世を振り返る。思い返してみても、確かに驚きの人事異動だった。

 あれは、王宮侍女となって一年が経った頃。実家に仕送りをしながら休日は領地経営に充てており、休みなく仕事に励んでいた。
 他の侍女は近衞騎士や官僚との良縁を求めて色目を使い、業務を疎かにして問題になっていたそうだが、私にはそんな余裕は一切なかった。色恋に興味を持たず真面目に仕事をしていたら、突然侍女頭から王女専属侍女に任命していただいたのだ。
< 12 / 14 >

この作品をシェア

pagetop