お菓子に釣られたシンデレラ 王女様の命令で私が王太子様と恋愛結婚!?
2 麗しき王子様との(仕組まれた)出会い

 あちこちから美味しそうなにおいがして、お腹がぐぅと鳴った。
 王都の賑やかなマーケットに心が躍る。

(我慢我慢! 王女殿下のおつかいなんだから!)

 私は自分に必死に言い聞かせながら、通りを急いだ。手元にあるのはシャーロット殿下のお使いで持たされた、可愛いクッキー盛り合わせセット。それから素晴らしい刺繍が施されたハンカチの山だ。

 これらは孤児院のバザーで売ってもらい、利益にしてもらうそうだ。こうして物品を寄付するのは、直接お金を寄付するよりも利点が多いから。子ども達は売る経験やお金を扱う経験ができるし、国が決めた孤児院への給付金に加えて殿下のお小遣いの範囲での支援が出来るのだ。

 シャーロット殿下は、こうした点では尊敬すべき雇用主なのだ。だが、一度決めたことをなかなか覆さない頑固な主は、私と王太子殿下を恋愛関係にするという無謀な計画を諦めてくれていない。
 私は出発前のことを思い出し、小さくため息をついた。



 それは、今朝のこと。目覚めのストレートティを優雅に飲みながら、シャーロット殿下が突然私に命じた。

「アナベル、今日は孤児院にお使いに行ってくださる?」
「かしこまりました。でも、殿下はいらっしゃらないのですか?」

 シャーロット殿下は孤児院支援に積極的で、毎月のようにご自身で足を運ばれている。私だけで行ってこいというのは珍しい。
 私が疑問をぶつけると、殿下はイタズラ顔でニヤリと微笑んだ。その瞬間、ピンと来た。嫌な予感がする──!

「今日のお兄様の予定は、王都の孤児院訪問ですの。そこで貴女達は、偶然運命の出会いを果たすのですわ!」
「それは偶然じゃないのでは……?」
「細かいことは気にしないで! ほうら着替えてちょうだい!」

 いつの間にか、可愛らしい町娘風のワンピースが用意されていて、殿下の侍女(つまり私の同僚達)によって、いつも以上に着飾って王都へおつかいにいくことになってしまった。

「わたくしは『魔法使い』役ですからね! 貴女を美しく着飾って、恋を演出いたしますわ! 可愛く着飾ってお兄様を射止めてくるのよ!」
「む、無理です……!」

 こうして、やる気満々の王女殿下に私の言葉は届くことなく、王都に一人送り込まれてしまったのである。
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