彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
翌朝、スマホのアラームで目を覚まし、素早く身支度を整えた。
自分の部屋に、家の中にいるのが落ち着かなかったので、ヤマトの到着LINEを受ける前に外に出た。
抜き足、差し足、忍び足で、階段を下りて、住居スペースをぬけ、店舗スペースの裏口から脱出する。
もちろん、ガレージに寄って、外出します、の書き込みをするのも、忘れなかった。
11月の朝は思いのほか寒く、ホッカイロがあっても、いいぐらいだと思った。
朝日が出る前の空を見上げれば、輝きが薄くなった星達がまたたいていた。
夜のとばりが上がり、太陽が顔を出すのを、今か今かと待っている。
「うははは!り―――――――ん―――――――――――!」
「ヤマト!?」
遠くから、私を呼ぶ声がした。
見れば、バイクを押してこっちに向かってくるヤマトの姿があった。
思わず駆け寄れば、距離が縮まり、お互いの顔がはっきりと見えるようになった。
「どうしました!?パンクですか!?」
「うははは!まさか!わしの単車の音で、瑞希はんらに気づかれる可能性があるやろう~!?せやから、途中でエンジン切って、押してきたんや!」
「そうでしたか・・・!お気遣い、ありがとうございます!」
「うははは!ええねん、ええねん!ほな、後ろ乗り!行こうや!」
「うん!」
言われるがまま、後部座席のシートに座る。
「うははは!ほな行くでー!?」
「よろしく!!」
キュォオオオオン!
静かな道路に、GSX1300Rハヤブサのエンジン音が鳴り響く。
ヤマトのバイクのタンデムバーを持った時、単車は緩やかに発進した。
キュォオオオオン!オン!オン!
私を乗せたヤマトのバイクが、フェリチータの前を通過する。
通り過ぎたところでヤマトは言った。
「うははは!先にマックで朝ごはんや!朝メシ食いながら、檜扇はんに電話や!これから行きますって!」
「わかりました!」
無人の道路の赤信号を、いくつも無視して進むが、だれもとがめる者はいない。
信号機の色が青に変わった時、朝日が空へとあがり始める。
今日という1日がスタートし、まだ見ぬ敵との直接対決が迫るのだった。