彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)





「うっ、うっ、うっ!」
「ど、どうされました!?」





老女は、大粒の涙を流しながら号泣していた。





「母さん!!」





それで口ひげ親父が私から離れ、泣いている老女の元へ駆け寄る。







「どうしたの、母さん!!?なんで泣くの??」
「や・・・やっと、やっと、凛道蓮君に会えて、嬉しくて・・・!」
「え?僕、ですか?」
「そうらしいで。」







気づけば、ヤマトが隣に来ていた。
老女はヤマトを見ると、首をかしげながら言った。





「あら・・・そちらの子はどこ子かしら?」
「あ、母さんごめん!!凛道蓮君が、どうしても付き添いがいなきゃ、母さんと会えないっていうから連れてくるしかなくて~!!」
「うははは!お初にお目にかかりまーす!!こーゆー者でーす!!」





そう言うと、私の手を掴み、つなぎ、老女の側に近づいていく。
そして、いつもの調子で名刺を差し出した。
ボロボロ泣きながらも、名刺を受け取り読み上げる老女。







「・・・いがらしやまと、くん?」
「ぶっぶっー!!ハズレだったので、凛道蓮を連れて帰りまーす!!」
「ええ!?待ってちょうだい、どこが違うの!?」
「苗字でーす!うははは!」
「みょ、苗字ね!?苗字、苗字・・・いからし、かしら?」
「ぶっぶっー!!やっぱりハズレだったので、凛道蓮を連れて帰りまーす!!」
「ええ!?じゃあ――――――――――いがあらし?」
「ぶっぶっー!!またまたハズレだったので、凛道蓮を連れて帰りまーす!!」
「いかあらしだわ!」
「ぶっぶっー!!ぶっぶー!!ぶっぶー!!ハズレが続きましたので、凛道蓮とはさよならでーす!!」
「い、いやー!」


「『ごじゅうあらし』、だろう?」







ヤマトが私を回収しようとした時、ぼそりと低い声が言った。







「読み方は、『ごじゅうあらしやまと』だろう?」







そう言ったのは、こちらに背を向けて、総ガラス張りの窓の前に立っている人。






「うははははーい!大正解でーす!!ほな、凛にはこのまま、お見舞いを続けさせまーす!!」
「よ、よかったわぁ~・・・」
「母さん!!」
「湖亀!!」
「大丈夫ですか、伯母様!!?」
「大伯母様しっかり!!」
「お、叔母様、お気を確かに・・・」






ホーとして脱力する老女を、左右から支える不審者の息子と、中年女性と、その間でオロオロするだけの不審者の親。
これに高齢のおじいさんが、ヤマトを怒鳴りつけた。








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