彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
「ああ・・・良い香りがするわ。ピンク色、大好きだから嬉しいわ。」
「気に入って頂けて良かったです。」
ほほ笑む老女に笑みを返せば、老女が私に手を伸ばす。
「手を握っても・・・いいかしら?」
「!?・・・ええ、もちろんです。」
手を差し出せば、片手で握られた。
(冷たい。)
相手の手には、ぬくもりがなかった。
老女は私の手を強く握ると、私へと視線を向けながら言った。
「息子や身内の者達が、失礼をしてごめんなさいね。」
「身内?」
「ええ、自己紹介させてちょうだい。私は檜扇湖亀(ひおうぎ こき)と申します。あなたをここまで連れて来た、二三人の母親です。」
(ビンゴ!じゃあ、やっぱり、瑞希お兄ちゃんのおばあ様だったのか!)
息子はあれだけど、優しそうないいおばあ様じゃないの!!
「それでこっちが―――――――夫の檜扇達比古(ひおうぎ たつひこ)さん。檜扇家の当主なんです。」
「フン!わしが大財閥・檜扇家の当主だ!!」
「はじめまして、檜扇達比古(ひおうぎ たつひこ)さん。」
エラそうなジジイだと思いつつも、最敬礼のお辞儀をする私。
「そしてこっちが、私の弟の高野槙雄(こうや まきお)くん。」
「だははは!よろしくな、凛道蓮!」
「こちらこそ、よろしくお願い致します、高野槙雄(こうや まきお)さん。」
「それで―――――――・・・・凛道蓮君が、不審者だと勘違いしたのが、槙雄(まきお)の息子の長月(ながつき)くんと孫の舟槙(しゅうま)ちゃんで、この場で唯一の女性が舟槙(しゅうま)ちゃんの長月(ながつき)くんのお嫁さんの代佳子(よかこ)ちゃんですよ。」
「舟槙(しゅうま)の母の代佳子(よかこ)よ!」
「高野長月(こうや ながつき)です・・・。」
「俺は高野舟槙(こうや しゅうま)だよ!もう不審者とは言わないでね~?」
「はい、言いません。失礼致しました。高野長月(こうや ながつき)さん、高野代佳子(こうや よかこ)さん、高野舟槙(こうや しゅうま)さん。」
「最後が―――――二三人の息子で私の可愛い孫の檜扇柊護(ひおうぎ しゅうご)ちゃんです。」
「・・・。」
そう言って瑞希お兄ちゃんのおばあ様が最後に呼んだのが、ずっと私達に背を向けている人物。