彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)





無になって、何も頭に浮かばない。
重力に従って、落下していくだけの私。








ギュウオオ―――――――――――――――――――――ン!!!



「あ!!?」

「なに!?」








瑞希お兄ちゃんと烈司さんが同時に声を上げる。
私の瞳に映ったのは、先頭を走る瑞希お兄ちゃんを、ヘルメットマンさんが追い抜かす。
そしてスピードをゆるめることなく、バイクの上で立ち乗りをするヘルメットマンさん。
落下する私の身体は、バイクの上で立ち乗りをし、両手を広げているヘルメットマンさんに――――








ガシッ!!

「きゃわああああ!!?」








――――――抱き留められた。








受け止めてくれた。

だから私も―――――――――――――








ヒシッ!!








反射的に両腕をまわしてしがみついた。








ギュウオ、ギュウオ、ギュウオ―――――――――――――――――――――ン!!








ヘルメットマンさんは、私をキャッチすると、ダンプトラックとの接触をギリギリで回避した。





ひかれなかった。

つぶされなかった!!








「ヘルメットマンさん!!」








立ち乗りから運転席に素早く腰を下ろすと、お姫様抱っこをする私を抱きしめて、ブレーキをかけた。








キキキキキキキキキィイィィイィィ――――――――――――!!!








そのまま、左右へ蛇行を、S字走りをしながら、スピードを落としていく。
私はそんなヘルメットマンさんに何もできず、その身をゆだねるしかなかった。








ギュウオオン、ギュウオオン、ギュウオ―――――――――――――――――――――ン!!








徐々に、バイクが体勢を立て直していく。
減速をし、安定した走りになっていく。








(助かる!?)








そう思った時だった。








パ―――――――――――ン!!!

ペキ!!

「えっ!?」

(銃声!!?)








そう思った時には、ヘルメットマンさんのヘルメットの一部がかけていた。








「ヘルメットマンさんっ!!」

パン!パン!パ―――――――ン!!

(だれが撃ってきてるの!!?)








見れば、逆送する私達の正面から、不審者が拳銃を向けていた。








(逃げなきゃ!!)

ギュウオオ―――――――――――――――――――――ン!!

「ヘルメットマンさん!?」








ところがヘルメットマンさんは、不審者へと突っ込んでいく。








ギュウオ!ギュウオ!ギュウオオ―――――――――――――――――――――ン!!








急加速する。
それに相手が驚いて動きが鈍る。
そこを狙ってヘルメットマンさんは動いた。










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