彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
正面衝突する軌道で、ヘルメットマンさんはヘルメットを脱ぎ捨てると、不審者の銃を持つ手にヘルメットを叩きつけた。
パカ―――――――――――――――ン!
振りかぶったヘルメットは不審者の銃に当たり、そのまま顔面をも殴り飛ばした。
「ぎゃう!!?」
不審者が叫び、バランスを崩す。
カシャーン!!
拳銃を落とす。
ファンファンファン!!
〈そこのバイク!!発砲したな!?待避所に止まりなさい!!〉
「!?岩倉だ!」
警察が追い付き、発砲したバイクを怒鳴りつける。
ブンブブ――――――――――ン!!
しかし、不審者の方は、武器を拾わずに逃走。
〈コラ止まれ!!待避所で止まれ!!止まれー!!〉
ブッ、ブッ、ブッ、ブンブブーン!!
不審者は岩倉の制止を無視し、今にも転びそうな運転をしながらも倒れず、そのまま私達から猛スピードで離れて行く。
ブンブブ――――――――――――ン!!
ファンファンファンファンファン!!
あっという間に遠ざかって行った不審者とパトカー。
(勝った・・・!!)
ギュ、ギュ、ギュ、ギュウオオ―――――――――――――――――――――ン!!
ヘルメットマンさんのバイクが方向転換し、逆走から普通の流れに戻る。
そして減速しながら――――――――――左側にある高速道路の待避所に止まった。
「・・・・はあ、はあ、はあ・・・・・・」
一瞬の出来事に、心臓が、手足がガクガク震えた。
「た・・・・・助かった・・・・・・・?」
ヘナヘナと・・・・ヘルメットマンさんの肩に顔を乗せれば、耳元で音がした。
「―――――――――――フゥ――――――――――――――――――・・・・・・・・・・・・・・・!!」
私を助けてくれたお方、ヘルメットマンさんが大きく息を吐く音。
「あ・・・・・・・・・ありがとう、ございます・・・・・!」
初体験の恐怖に、震えながら言葉をつむげば、相手はギュと抱き寄せてくれた。
(あ・・・・ヘルメットマンさんの声?初めて聞いたかも。)
息を吐くだけだったけど、ヘルメットマンさんの音を聞いたのは初めて。
同時に、高そうな香水のにおいがした。
密着しているせいで強く感じる香りは、近寄りがたい感覚があった。
それで身体をこわばらせる私の背中を、ヘルメットマンさんは何度も撫でてくれた。
大丈夫だというように、ヨシヨシと背中をなでてくれた。