彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
「捕まるのは面倒だ。振り切って逃げるぞ!それでいいな、瑞希!?」
「・・・・!!」
「瑞希!?聞いてるのか!?」
「あ!?な、なんだよ!?」
「チッ!使えんな!元・初代副総長の俺が代わりに仕切る!!龍星軍、全員ばらけて高速を降りろ!烈司、凛道付きの瑞希から離れるなよ!?」
「「「「「「「「「「「押忍!」」」」」」」」」」」
「引き受けた!凛たん、瑞希、行くぞ!」
「凛は俺のケツに乗せる!!」
「・・・わーた!それでいいから、バックレるぞ!?」
「ああ!来い、凛!!」
ミシ!
「いっ!?は、はい!」
瑞希お兄ちゃんに手を引っ張られる。
いつもよりも強い力。
思わず、痛いと言いそうになって我慢する。
なんとなく言える状況じゃなかった。
「凛!!ちゃんと俺に捕まれよ!!?」
私さえ我慢すれば―――――――と思ってしまうような迫力を、瑞希お兄ちゃんは見せてきたから。
ファンファンファンファン!
迫ってくるパトカーの音で、急いで瑞希お兄ちゃんの後ろに乗車する。
すると、運転席にいる好きな人が、首だけで私へと振り返りながら言った。
「凛!!帰ったら、全部話してもらうからな!!?なんでオメーが、『檜扇柊護(ひおうぎ しゅうご)』の名前を知ってるのかも含めて全部な・・・・・!!!?」
有無を言わさぬ言葉と表情。
「・・・わかりました。」
同意すれば、瑞希お兄ちゃんのエンジン音が響く。
ブロン、ブロン、ブロロロン!ブロ―――――――――――――ン!!
先陣切って、待避所から飛び出す瑞希お兄ちゃんの真紅のインパルス。
ブロロロン!ブロ―――――――――――――ン!!
真っ赤な単車に乗りながら、メーターを簡単に振り切るスピードで高速道路を駆け抜ける
ヴォ―――ンヴォ―――ン!!
そんな瑞希お兄ちゃんの速さに、烈司さんは余裕で着いてきてるので、すごいと思う。
烈司さんをすごいと思いながらミラーに目をやれば、眉間にしわを寄せた厳しい表情をしている瑞希お兄ちゃんを目にすることになる。
(怒ってる・・・。)
『檜扇柊護(ひおうぎ しゅうご)』を見てから、瑞希お兄ちゃんはずっと怒っていた。
怒っている理由はわかっても、どうして怒るのかはわからない。
ただ・・・・・【正直に全部話さないと嫌われてしまう】と、本能的にわかったので、覚悟を決めて瑞希お兄ちゃんの身体にしがみつくのだった。