彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
◇強烈連続ワンパン!!危うきこと累卵(るいらん)のごとし!!◇
どれぐらい泣いたか、わからない。
どれぐらい泣きながら走ったか、わからない。
「ゼーハー、ひっく!ひっく!ゼーハー・・・ひっく、えっぐ!」
呼吸が苦しくなったので、走るのを歩くのに変える。
寒い季節だから、温かくしているはずなのに、寒くてしかたない。
―俺がいいって言うまで、凛はここに来るな!―
―オメーは、俺の視界に入るな!!俺の目の前にくんなっつってんだよ、凛!!!!―
―出て行け凛!!!今すぐだっ!!!!―
―俺の前から消えろっ!!!!―
―出て行け凛道蓮っ!!!!―
どんな時でも瑞希お兄ちゃんは、私の味方だった。
乱暴に扱われたことなんて、1度もない。
それがみんなの前で、怒られた。
怒られたというよりも、完全に激昂された。
敵に対して使うような言葉で、きつく拒絶された。
それを思い出しただけで、冷たい水が両目から出てきて止まらない。
キュォオオオオン!!
「凛っ!!」
そんな状況の中、爆音が響く中で名前を呼ばれる。
「ヤ、ヤ、マトォ・・・・・?」
私が走っている歩道に、縁石が途切れた場所から、強引に単車で入り込むヤマト。
目の前を、行く手をさえぎるように止まると、素早く単車を止めながらかけよってきた。
「凛!!!薄着で飛び出したらあかんやろう!?」
そう言いながら、ヤマトの腕に引っ掛けてあったコート・・・私が着ていたコートを、私の身体にかけてくれる関西男子。
「ヤマトォ・・・・・!」
「泣いたらええ!!泣いたらええから!!」
そう言ってギュッと抱きしめてくれた。
暖かくて・・・・・瑞希お兄ちゃんとは違った意味で心地いい腕の中。
(―――――――――――瑞希お兄ちゃん!!)
ヤマトの腕に抱かれたことで、瑞希お兄ちゃんの腕の中を思い出してしまった私。
それで涙の量が増えてしまった。
「うぅ~!うっ、うっ、うっ!ひっく、えぐ、ひっく!」
「それでええ!!泣いてええねん!!」
情けない姿を見せる私を、ヤマトは否定しなかった。
泣いていいと言ってくれたことで、救われた気がした。