彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
可児君のお家、『慶良寺(けいりょうじ)』のお寺にやって来た。
副総長の家に着くころには、私の涙も止まっていた。
玄関のかぎを、引き戸を開けながら、可児君は私に先に中に入るようにうながす。
「どうぞ、凛さん!古くて汚いですが、上がって下さい!」
「いえ、歴史的な建造物な上に、キレイにお掃除が行き届いてますよ?」
「そっすか!?ありがとうございます!」
(可児君の家、初めて来たな・・・。)
お寺なので、日本伝統の和式の建築なのは当たり前。
可児君の部屋も和室になっていて、きちんと片付けられたきれいな部屋だった。
「部屋には性格が出ると聞きますが、可児君のきちんと性格が出てますね。」
「マ、マジすか!?凛さんほめ過ぎっすよ!あ、何か飲みますよね!?どれにしますか!?」
「あ、お気遣いは―――」
「遠慮しないで下さい!!外寒かったですからね!今、温かいお茶を作りますから!」
「え?作る??」
「凛さん、この中から好きなものを選んでください!!」
パカ!
そう言って、下手の隅に置いてある横長のボックスを開けた。
途端に冷えた冷気が、ただよってきた。
それで、その横長ボックスが何か気づく。
「え!?部屋に冷蔵庫があるのですか!?」
「ミニサイズなんすけどね~!」
その割には、まあまあのサイズだと思う。
冷凍庫までついてるし。
「冷えちまってますが、すぐに温めますよ!温まるなら、お茶系が良いっすよ!アサヒの爽か、伊右衛門の京都ブレンドか、コカ・コーラの綾鷹か、サントリーのウーロン茶か、キリンの生茶か、どれが良いですか?」
「え!?えーと・・・じゃあ、アサヒの爽でお願いします。」
私達の見てる前で可児君は、部屋に置いてある電気ケトルのふたを開ける。
そして、2Lサイズのペットボトル、アサヒの爽のふたを開けて、中身を電気ケトルに直(じか)に入れ、ふたを閉めてボタンを押した。
「5、6分で湯が沸きますから!」
「僕、普段は水しか電気ケトルに入れないので、お茶を直に、電気ケトルに入れて使う人、初めて見た気がします。」
「いや、すんません!凛さんに早くホットで提供したかったもので!」
(急須で入れたりしないのね・・・)
〔★可児は急いでいた★〕