彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
「今日はね、凛道蓮クンがきてくれると舟槙(しゅうま)ちゃんから聞いていて、昨日から楽しみにしていたの♪だから、すごく良い気分なのよ♪」
―あんな!あんな連中と付き合うなど言語道断!!―
笑顔の湖亀さんと、鳥恒先生の言葉が私の中で重なる。
(ごめんなさい、鳥恒先生・・・・・・吉と出るか、凶と出るか・・・瑞希お兄ちゃんにとって本当に『害』なのか把握しておきたいのです・・・!!)
忠告してくれたお坊さんには悪いと思いつつ、笑顔で檜扇湖亀さんに告げる。
「もったいないお言葉です。しかし、本日は体調が良いとわかり、僕も良い気分になれました。」
「凛道蓮クン、そんなに固くならないで。もっと気軽に接していいのよ?」
「いえ、目上の方に、馴れ馴れしくなど、無礼な真似は出来ません。」
「まあ・・・本当に礼儀正しいのね。きっと、あなたのお母様がしっかりと教育されたのだと伝わってくるわ。そうよね、二三人・・・!?」
―――――――お前は何もしていない。―――――――――
まるで、そう語っているような目で、息子をにらむ母親。
「か、母さん!」
これに、口ひげのクソ野郎はもごもごと黙り込んでしまう。
(いい気味だわ。)
そうやって少しは、瑞希お兄ちゃん母子を放置したことを悔やめばいい。
そう考えたら、孫だと勘違いされても構わないと思えた。
「檜扇湖亀さん、僭越ながら本日も・・・あなた様へのお見舞いの品をお持ちしました。」
「まあ!?私に贈り物を持って来てくれたの!?」
「はい。お小遣いで買ったので、高価なものではないのですが――――――――」
そう伝え、ポケットからラッピングした小物を取り出す。
「受け取って頂けますか?」
「もちろんよ♪」
その言葉で、小さなプレゼントを老女に渡す。
受け取った老女はご機嫌に笑う。
「嬉しいわ~なにかしら!?開けても良い!?」
「はい、中身を改めて下さい。気に入らなければ、持って帰りますので。」
「ダメよ!凛道蓮クンがプレゼントしてくれたものを、気に入らないわけないじゃない!返しませんからね!?」
私からのお見舞いを守るように抱きしめ、首を横に振る老女。
「湖亀の言う通りだ!蓮が奪い返さないうちに、中身を開封してしまえ♪」
「ええ、あなた♪」
(本当にこの人達が、魑魅魍魎なのかしら・・・?)
そんな思いで、ラッピングをほどく老女を見つめる。