彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
「ダ、ダメじゃないか、お前!凛道蓮クンを愛人の子呼ばわりして!」
「な!?お前だって、さっきまで、そう呼んでいただろう!?」
「凛道蓮クン、誤解しないでね!私は差別なんてしてないから!だから大奥様には良しなに~!」
「ウソつくなよ!何媚びを売ってるんだ!?」
「そうだ!俺の方が差別なんかしてなかったぞ!!」
「いいや!僕の方が最初から凛道蓮クンを認めていた!ねぇ、仲良くしようよ、凛道蓮クン!!」
「貴様!!抜け駆けする気か!?金の亡者!!」
「なんだと~!?だいたいお前らは――――――!!」
仲間割れを始めた銭ゲバな親族達。
舟槙(しゅうま)さんはそんな連中に、聞こえないように小さくため息をつくと私に言った。
「蓮クン、病室に入ろうか?」
「はい。」
だから、ケンカを始める集団をスルーして病室の出入り口に進んだ。
舟槙(しゅうま)さんは、病室のドアをノックしてから声をかけた。
「大伯母様、失礼します。凛道蓮クンを連れてきました。」
「どうぞ、入ってちょうだい!」
思ったよりも、ハリのある元気な声が返ってきた。
それでケンカしていた集団は静かになり、そいつらに注目される中、私達は病室に入った。
室内には、湖亀さんはもちろん、舟槙(しゅうま)さんの祖父の高野槙雄(こうや まきお)と、母親の高野代佳子(こうや よかこ)さんと、口ひげの超エロ親父がいた。
「蓮ちゃん、待ってい―――――――――――――!」
「蓮、待っていたぞ!!」
母親の言葉をさえぎりながら、私へと声をかけてくる馬鹿息子。
強引に私の両肩に両手を置くと、切実な表情と声で話しかけてきた。
「蓮!!昨日はいろいろすまなかった!!誤解を解くために、蓮と話をしたいんだ!!」
「檜扇二三人さんと、話すことなどありません。僕は檜扇湖亀さんのお見舞いに来ただけですから。」
「蓮は誤解してる!!お父さんは好きで、愛人を作ったわけじゃないんだ!お父さんに寄ってくる女性が多すぎたのが悪いんだ!!」
「その話、まだ続きますか?やめないなら、帰ります。」
「二三人ぉ!!いい加減にしろっ!!」
「そうよ!!しつこいわよ!!見苦しいわね!!」
私達のやり取りを見ていた槙雄さんと代佳子(よかこ)さんが、口ひげのクソ野郎を叱る。