彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)





「ああ、大ウソだ!!あのクソ野郎とおふくろは、マッチングアプリで出会った!それもクソ野郎の方は、独身の会社員として登録し、趣味で意気投合したおふくろを騙して交際まで持ち込んだんだ!!」
「気づかなかったんですか!?」
「クソ野郎は、おふくろと会うためだけの部屋を借りて、そこで会ってたんだよ!!しかも、付き合って1年目には、クソ野郎からの熱烈なアプローチで同棲にまで発展させやがった!!」
「売約済みのくせに、いい根性してますね!?」
「そうだろう!?女房いるくせに、若い女のおふくろで遊びやがったんだ!!それも、サラリーマン設定を演じ切り、給料もボーナスもすべておふくろに渡してたから、おふくろは疑うことさえしなかった・・・!!」
「え!?給料とボーナスを全部って・・・檜扇家の会社のお給料は、かなりの金額ですから、気づきませんか??」
「言っただろう!!サラリーマンを演じてるって!!自分がもらってる給料の一部を、全額だって言っておふくろに渡してたんだよ!!」
「ええ!?じゃあ、有り金全部を渡してたってのは、あの男のウソだったのですね!!?」
「はあ!!?有り金全部だぁ!!?小遣いの一部の間違いだろう!!?自分の小遣いの一部が普通のサラリーマンの月収と同じだったから、全部おふくろに渡してたってのが真実だぞ!!?」
「なんですかそれ!!?ムカつきますね!!」
「ああ、ムカつくぜ!!健気にもおふくろは、自分の仕事給料とあわせて、結婚資金として貯めてたんだ!!クソ野郎が毎月、会社員としての設定通り渡してくる安月給で、結婚後は共働きでどうやりくりするかまで考えてたっていうのによ!!」





そう言って立ち上がると、瑞希お兄ちゃんは冷蔵庫からビールを取り出す。
缶の口を開けると、私の隣に座ってから一口飲む。







「凛、オメーも飲め飲め!」
「は、はい!」







ご機嫌を損ねないためにも、一口飲むが―――――――――





(美味しくない・・・・)





現在の会話同様、マズイものだった。






< 381 / 772 >

この作品をシェア

pagetop