彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
「あの!本当に大丈夫なので、もう一度確かめて下さい!」
「あん?どれどれ。」
けげんそうな顔をしつつも、もう一度、おでことおでこをくっつけてくれる瑞希お兄ちゃん。
「・・・確かに熱くはねぇーな・・・。」
「でしょう!?でしょう!?」
「でも、用心のために持っておけ!ほら!」
「あ・・・。」
そう言って、私のズボンのポケットに手を突っ込んで薬を入れた。
(優しいな・・・)
「ありがとうございます・・・。」
「兄貴として、当然のことをしたまでだ。」
ニヤリと笑うと、グッと背伸びをする好きな人。
「小腹がすいてねぇか?」
「え?えーと・・・」
「とりあえず、なんか温かいドリンク作ってやるから来いよ。」
「あ!?」
私の手を引いて立ち上がらせると、部屋の鍵を開ける瑞希お兄ちゃん。
密室での2人きりタイムは終了となった。
(あーん!もう少し、2人きりでいたかったのにぃ~~~~!!!)
〔★自業自得である★〕
がっかりしていれば、こちらに背を向けたまま瑞希お兄ちゃんは言った。
「今、ここで話したこと、他の奴らには内緒にしてくれ。」
「え?わ、わかりました。」
「・・・わりぃな・・・。」
そう語る背中がさみしく見えたので――――――――
ドン!
ガシ!
「おわ!?」
「絶対誰にも言いません!!!」
抱き着きながら約束した。
「凛道蓮の名に懸けて、他言無用は致しませんので、ご安心下さい!!」
「・・・サンキューな、凛。」
ポンと、頭に手を置かれ、ヨシヨシと撫でられる。
きっと、実の父・・・クソ野郎のことは、瑞希お兄ちゃんにとって触れられたくないことなのだろう。
ならば、聞かない方がいい!!
クソ野郎のことは聞かない方が――――――――――・・・・・
(母親は?)
「瑞希お兄ちゃんのお母さんって、どんな方だったと、語り継がれてるんですか?」
「ぶっ!?おま!?人の母親をおとぎ話みたいに言うなよ~!」
「あ!?し、失礼を致しました!!」
「いや、別にいいけどさぁ~・・・・・・・・優しいから、強かったって聞いてるぜ。」
「優しいから強かった??」
不思議な言い回しに瑞希お兄ちゃんを見上げれば、首だけで振り返りながら、私の好きな人は仰った。