彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
「待ちなさい、凛道蓮君!!!」
そう言って、ただの未子さんが私の腕をつかむ。
「行かないで!!!」
「大声を出さないで下さい。お店と他のお客さんに迷惑です。」
「真田瑞希の写真をたくさんあげるから!!!」
「僕から手を、放して下さい。」
「ほしいものがあれば、何でも買ってあげるから!!!」
「――――――放せ。」
「きゃあ!?」
力づくで振り払えば、ただの未子さんがその場に座り込む。
「お客様!」
そこでとうとう、お店のスタッフに声をかけられた。
「これ以上、騒がれては他のお客様に迷惑です。退店して頂くことになりますよ?」
正論を言うスタッフに、深々と頭を下げながら、私はただの未子さんの尻拭いをした
「何度も騒いでご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした。今すぐ、出ていきます。失礼を致しました。」
「そ、そうですか。」
謝れば、相手もあっさり引いてくれた。
だから、トレーとゴミを片付けて、そのまま帰ろうとしたのだが―――――――――――
「助けて下さいっ!!!!!」
「っ!?」
床に座り込んでいた、ただの未子さんが大声で叫んだ。
「お願いです!!!お義母様は、あなた方兄弟がドナーになって下さらないと死ぬしかないんです!!!助けて下さい!!!」
「なっ・・・!?」
ドナーも何も、まだ検査受けてないだろう!?
てか、私は絶対適合しないぞ!!
赤の他人なんだから!!
つーか、意地でも瑞希お兄ちゃんにドナー検査しろって言うのか!?
というか―――――――
(こんなところで、大声でそんなセリフを言われたら――――――――――――)
「なあ、聞いたか?ドナーだってよ!」
「さっきからうるさいと思ってたら、ドナーの話してたの?」
「え?あの人、ドナー拒否されてるの?」
「いや、あの人のお母さんがドナー拒否されてるんだろう?」
「ママードナーって何??」
(ますます注目されるだろうが!!)
「ドナーとして適合したのは、あなた達だけなんです!!!お願いします!!!お義母様を見殺しにしないで下さい!!!」
こっちは悪くないのに、店内の空気は、完全に私達が悪いようなムードになっていた。