彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)






「凛、行くで!」
「あ、ああ・・・」
「行かないで!!!どうかお慈悲を下さい!!!」






逃げようとすれば、四つん這いになりながら、追いかけてくるただ者じゃない未子さん。








「何でもします!!!財産も、すべて譲ります!!!お義母様の命が助かるなら、何でも言うことを聞きます!!!だからどうか、助けて下さい!!!うっ、うっ、お願い・・・!!!死んでほしくない!!!ひっく、ひっく、おかあさぁ―――――ん・・・!!!」








そう言うと、その場で顔をおおい、泣き出してしまう檜扇家の嫁。





「お、お客様、大丈夫ですか?」





見かねたスタッフが駆け寄る。








「う~~~~~~~!!うわああああ!!!助けて下さい!!!ドナーなら、助けて下さいっ!!!ううう・・・・!!!」
「お客様、しっかり!」
「立てますか?一度お席に座って下さい。」
「手を貸しますから、さあ・・・!」








床で号泣する未子さんに、スタッフが数人がかりで元いた席に座らせる。








「死んじゃいやぁ~!!!大好きなお義母様が助かる方法があるのに!!!ドナーがいるのに!!!どうして見捨てるのぉ~~~!!!」
「ちょっと!ウソを言うのは――――――!!」
「やめろ、凛!わしの後ろに隠れろ!!」
「ヤマト!?」
「撮られてる。」








その言葉で店内を見渡せば、数人の客がスマホをこちらに向けていた。








「おい、なに撮っ――――――――――!」

「だからやめろや、凛!隠れてろ!」








撮影者達を注意しようとすれば、ヤマトが私を引っ張って止める。
そして、長身のヤマトの腕の中に私をしまい込んでくる。








「何が望みや!!?」
「同意書類にサインして!!!」








ヤマトが問いかければ、ただの未子さんは即答する。
見れば、ブスの1人が差し出した書類を受け取り、それを私の方へ突き出していた。
それでヤマトは、自分が着ていたコートを私の頭からかぶせる。







「ちょ、ヤマト!?」
「隠れてろ。」







そう告げると、ただの未子さんの前まで行き、書類をひったくるヤマト。








「同意書類は受け取った!!!サインはドナー検査の結果がわかってからや嘘つき女が!!!」
「ひっ!!?」








怒鳴るヤマトに過剰に反応しておびえるただの未子さん。
それを、反射的にかばうようにして守るマクドナルドのスタッフを見て、こちらは完全に悪者だと思い知らされる。





〔★計算しつくされた罠だった★〕







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