彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)







「辛い思いをされているのですね・・・。」
「すみません・・・泣かないと決めてきたのに・・・!」
「泣いて下さい。泣く行為は、癒しの効果があるのですから!」
「あ、ありがとうございます・・・!」







そう言い終わる時、相手の目から涙があふれていた。
気まずかったが、聞くだけ聞いてみた。







「本当に日本の大学は・・・あなたが被害者だという事実を、信じてくれなかったのですか?」
「はい・・・!!こちらの言い分は、一切受理されませんでした。」







か細い声で言うと、相手は鼻をすする。
静かな室内で、女性のすすり泣きがしばらく続く。
相手が、ハンカチをしまうのを待ってから、出来るだけ優しい声で聴いた。







「あなたは被害者です。それなのに日本の大学側は、あなたの言い分を信じなかったのですか?」
「信じる信じない以前に、圧力ですよ。」
「圧力?まさか―――――――――高野舟槙(こうや しゅうま)ですか!?」
「正しくは、高野舟槙(こうや しゅうま)の伯母の母です。」
「伯母ということは、檜扇未子ですか!?奴の母も曲者なのですか!?」
「ええ・・・!!憎たらしいほど、許しがたい、権力を私物化している極悪人ですわ・・・!」







そう語る被害者の表情は、怒りに満ちていた。
その様子を見ながら、私は推測を立てる。







(檜扇家は女性が強い権力を持ってる一族なのかしら?彼女の話を元にして考えれば、檜扇未子の実家も、世間的に権力がある家ということになるわよね・・・。)







厄介だと考える私に、さらなる悲劇を相手がしゃべった。









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