彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)







「毎日毎日・・・アドレスを変えても変えても、スマホを捨てても、お店に連絡をしてきて、私に付きまとい・・・外では、あいつの取り巻きがいつもいて、警察に相談しても、男女のトラブルには、民事には介入できないと助けてくれなくて・・・彼氏のご両親に責められて、彼氏には私から別れを告げてお別れして・・・外に出れなくなり、大学にも通えなくなって、留年が決まって・・・失うものが何もなくなったんです・・・!!」
「桐生さん・・・!」
「あの日、あいつに指定されたタワマンに行って・・・あいつの部屋の前で包丁を出して、インターホンを鳴らせばそれで終わりに出来ました。それなのに――――――――!!」







両手で顔をおおいながら、桐生さんは言った。







「知らない女性が私から刃物を取り上げて――――――――――ああ、あの人は男の人だったんだわ・・・!その人が、代りにインターホンを鳴らして、出てきたあいつの胸ぐらつかんで室内に入ってしまって――――――再びその人が出てきた時に、私にタオルで包んで袋に入れた包丁を返しながら、『オメーの父親は今釈放されて、今後、オメーの店には手を出さないようにしたから帰れ。』と言われて、エントランスまで付き添われて、タクシーを呼ばれて、家に帰されて・・・タクシー代も、その人が払ってくれて・・・」
「殺し損ねた、ということですか?」
「複雑です・・・。中性的な男性でした。初めて見る顔でした。でも、その人の言う通り、家に帰ると、父が釈放されて帰宅していて・・・。どこに行っていたか聞かれ、洗いざらいすべて話したら、すごく怒られて、泣かれて・・・高野家と檜扇家に関わるのはやめようと・・・決まりました。」
「・・・家族会議で、関わらないと決まったのに、どうして僕に相談に来たのですか?」







忌まわしい過去を、被害者が蒸し返している時点で答えはわかっていたが聞いた。
私の問いかけに、震える声で桐生さんは教えてくれた。









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