彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
「大の大人が俺みたいな小僧に、敬語を使って頭下げてまで頼んでんだ。なによりも、真田瑞希様の父親だと名乗る以上、事実関係を確かめておく必要がある。だからついて行く。」
「いやいや!明らかに写真が欲しくて、ついていくんじゃないっすか!?だめっすよ、凛先輩!!凛先輩1人じゃ行かせられません。」
そう言うなり、背後から私をハグする中学生。
「離せ、雷太!総長命令だ!」
「凛先輩が心配だから、聞けないっすー!!」
「うははは!わしも襟足君に賛同やねん!ちょっと冷静にならへんか、凛―!?」
「ヤマト!?」
そう言うなり、私の首に腕を回すと耳元でささやいてくる関西男子。
「瑞希はんの写真はともかく、瑞希はんと先輩方がおらん時間帯狙って訪問してくるって、タイミング良すぎんかー?」
「!?・・・言われてみれば・・・・・」
「そもそも、瑞希範から父親に関すること、自分聞いてへんやろう?」
「聞いてない・・・。でも――――――――」
「気になるか?」
「・・・うん・・・。」
瑞希お兄ちゃんのお父さん。
目の前のしょぼいロマンスグレーの口ひげが本当に父親なのかは、まだわからない。
だけど、瑞希お兄ちゃんの父と名乗る人が私に何の用があるのか―――――――気になる。
(瑞希お兄ちゃんのお写真が気になる・・・!!)
「わかった。」
迷う私を見透かすようにヤマトはつぶやくと、口に手を当てて、最敬礼している相手に言った。
「なぁなぁ!!瑞希はんのおーとーん!!わしらも凛について行ってええってゆーなら、凛を引き渡してもええで~!?」
「ヤマト!?」
「なっ!?」
関西男子の言葉に、下げていた頭を上げながら口ひげ男は言う。
「それは困る!!凛道蓮君にしかできない大事な話なんだ!!家族に関する話をするから、部外者に聞かれては困る!!」
「うははは!それなら凛は、ついて行かんって!!写真もらえても、1人は嫌やから、ついて、行・か・へ・ん!って!!!」
「ぐっ・・・!」
念を押して言うヤマトの言葉に、本当に困った顔をする瑞希お兄ちゃんの父親だと名乗る人。
しばしの沈黙が続いたのち、下唇をなめた後で口ひげが言った。