彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
僕は凛道蓮。
高校1年生の男子生徒なんだ。
瑞希お兄ちゃんの恋愛対象は、なぎささんの前例があるから女性。
間違っても、男ではない。
「なんで・・・なんで・・・俺は――――――――――――!?」
パニックに陥る好きな人を見ているうちに、いたたまれなくなる。
(私、瑞希お兄ちゃんを困らせてる・・・!?)
そう思ったら、反射的に叫んでいた。
「あ・・・あたっただけでしょう!!?」
「あん!?」
恥ずかしくなり、苦し紛れの言葉をつむぐ。
「あ、当たっちゃっただけですよ!!事故ですっ!!事故!!」
「事故って・・・!!」
「あっ、あの!ご、ごめんなさい・・・!!」
耐えきれなくて、顔をそむける。
私達の間に沈黙が流れる。
(どうしよう!?どうするの!?どうなるの!?)
内心修羅場で、相手の出方をうかがう。
これに瑞希お兄ちゃんは――――――――
「い、いや、うん!そうだな!!そ、そうそう!そうだ!そうだ!!」
ひどく明るい声で言ってくれた。
「当たっただけだよなっ!!」
私の言葉に、同意してくれた。
「そ・・・そうですよ!当たっちゃいましたね!」
「あははは!そうそう!当たったんだ!事故なんだよな、事故!!」
「ええ、事故ですとも!!」
「事故だ事故!!予想外の大事故ってか~!?」
「・・・・・わかってますよ・・・・!」
「・・・・・わりぃ・・・・。」
「・・・いえ・・・。」
人間の感情って難しい。
誤魔化せたからいいはずなのに、同意されたらされたで傷つくなんて・・・。
反射的に、ギュッと抱き付く。
「り、凛・・・!」
「瑞希お兄ちゃんはキレイです・・・。二度と、汚いなんて言わないで・・・!」
「凛・・・。」
「あなた様は、僕の希望の光だから・・・!」
「・・・凛。」
抱きしめられる。
互いの体温を確かめ合うように密着する。
それで、瑞希お兄ちゃんが私の頭をなでてきた。
いつものように、優しく、労わるように触れてくれる。
いつもの瑞希お兄ちゃんに戻る。
だから私も、いつも通り、彼の胸に顔をうずめてすり寄る。
これに瑞希お兄ちゃんは、力いっぱい私を抱き寄せてくれた。
こうして、すべてがうやむやになったのだった。
~ドナー争奪戦決着!!?未来につながる華麗なる後始末!!~完~