彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
放課後、ヤマトの部屋で菅原凛から凛道蓮に変身する。
髪をウルフヘアにして軽く遊ばせ、モニカちゃん作のメンズ版パンクロリータ服を着る。
戸締りを確認してからヤマトの部屋を出て、エレベーターに乗り込んで一階へのボタンを押す。
(あ~・・・緊張してきた・・・!)
1人で瑞希お兄ちゃんの家まで行くのは久しぶりだけど、それ以上に気がかりなことがあった。
(昨日キスをした手前・・・・・瑞希お兄ちゃんは、どんな対応をしてくるだろうか・・・?)
漫画やドラマや小説なら、ヒロイン(!?)が主人公にキスされたら喜ぶ。
私もしらふで、瑞希お兄ちゃんにキスされたら、大喜びするものだと思っていた。
少し前なら、菅原凛のベッドの上で、想像しただけで、ジタバタしてしまっていた。
なのに、だ!!
(実際にキスして見た結果、嬉しさよりも複雑な気持ちの方が強い!!!)
どうしてなの?
なぜなのかと考えてみる。
(もしかして・・・愛の言葉をささやかれなかったから?)
キスにはつきもののお砂糖のように甘い言葉。
(ムードがロマンチックじゃなかったから?)
キスにふさわしいラブラブさがなかったから?
考えても考えても――――――――答えは出てこない。
そんなわけで―――――――
(瑞希お兄ちゃんと、顔を合わせるのがツライ・・・)
という気持ちになっていた。
(はあ・・・私の恋愛運、悪いのかなぁー?でも、キスできたことは嬉しくないわけじゃない・・・。)
すごく自然に、スムーズにキスした私と瑞希お兄ちゃん。
(それなのに、手放しで喜べないのはなぜだろう・・・?)
悩ましい気持ちで、ヤマトの高級マンションから一歩足を踏み出した時だった。
――――――――――ギュウオオン!!
「え!?」
聞き覚えのあるバイク音がした。
音のした方を見れば――――――――――――
「ヘルメットマンさん!!?」
瑞希お兄ちゃんの異母兄の檜扇柊護さんがバイクにまたがって止まっていた。
それも、ノーヘル状態。