彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
瑞希お兄ちゃんの父親と名乗った人は、高級店の個室に、私達を連れ込んだ。
「ここは、防犯設備はもちろん、壁も防音効果があるから、内緒話をするのには最適なんだ。」
そう説明する自称・真田瑞希様の父親と、円卓を囲むことになった私とヤマトと雷太。
周りには、お店の人らしい給仕(きゅうじ)係の人が数人控えていた。
「小腹ぐらいはすいてるだろう。スイーツとドリンクを用意させた。」
口ひげの言葉に合わせて、大量のスイーツと、ドリンクが運ばれてくる。
私達が座る円卓とは別に、四方に置かれたシンプルなテーブルクロスが敷いてある机に、どんどんスイーツとドリンクを置いていく。
あっという間に部屋中が、スイーツパラダイスのような状態になった。
「すっげー量っすね、凛先輩!?」
「そ、そうだね。」
「うははは!これ、全部、食うてえーの!?」
スイーツだけでなく、新鮮なフルーツに、アイスクリームに、菓子パンまであった。
それを見て、気になったので聞いてみた。
「あの、お支払いは1に人当たりおいくらぐらいですか?」
「ははは!俺のおごりだから、気にせずに食べなさい!」
「うははは!やったぁー!まいど、おおきに!!」
「えー!?ヤバくないっすか!?タダとか、危なくないっすか!?」
能天気なヤマトをよそに、現実的な雷太。
「うん、僕もそう思う。タダで頂くのはちょっと・・・せめて、僕らでも払えるお店にしてほしかったです。」
「それじゃあ、大事な話ができないじゃないか~?ここは、口止め料だと思って食べてくれ!!」
「「「口止め料!?」」」
声をそろえる私達に、にこやかに口ひげ男は言った。
「そう!今からしゃべることを誰にも言わないと内緒にしてくれることを条件に、飲み食いしてくれたまえ!」
「じゃあ、内緒にできそうにないなら、食べない方がいいですね。ヤマト、雷太、話を聞き終わるまで、手を付けるんじゃないぞ。」
「押忍!!」
「うははははーい!」
「ええ!?そうくるか!?そういう逃げ道を考えちゃうのか~!?」
私の言葉に、してやられたという表情をする口ひげ男。
それを見て、本当に瑞希お兄ちゃんと親子なのかと疑わしくなる。
(あの素晴らしいお方の原料なのか、しっかり見極めなければ・・・!!)
〔★凛は値踏みモードに入った★〕