彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
「お願いだ、凛道蓮君!!君の口から瑞希に、祖母のお見舞いに行くように伝えてくれ!!本当に母は重症なんだ!!一目会いたいと、毎日泣いて過ごしてるんだよ!!会いたいのに会えないと、泣いてるんだ!!」
「っ!!」
―会いたいのに会えない―
(私も瑞希お兄ちゃんを探してる時は、そんな思いで探していたな・・・)
「俺は瑞希に嫌われてしまっているから、瑞希は会ってくれさえしない!!待ち伏せしても、毎回逃げられてお手上げなんだ!!」
「なんでそこまで嫌われちゃったんですか!?」
「個人情報だから言えない!!ただ、これを機会に、俺は瑞希の将来へ投資したいと考えている!!母と会ってくれるなら、バリスタの仕事の手助けをしたいと、金銭的に援助したいと思っている!!」
「え?今までしてなかったのですか!?父親なのに、おかしくないですか!?」
「うっ!?み、瑞希に、断られて~・・・!だけど!!今回の件をきっかけに、家族で暮らしたいと母は思ってるんだ!!親孝行をしたいのもあるけど、今まで瑞希に寂しい思いをさせた分の謝罪もしたい!!だからどうか、瑞希に母の見舞いに来てもらえないか、凛道蓮君から交渉してほしい!!頼む!!この通りだ!!」
ゴン!!
手を握られたまま、額をテーブルに打ち付けながら、頭を下げる檜扇(ひおうぎ)さん。
(・・・・・どうしよう。)
相手の事情はわかった。
でも、瑞希お兄ちゃんが嫌がることを、お願いするのは気が引ける。
だけど―――――――
「どちらの病院ですか?」
「えっ!!?」
「凛。」
「凛先輩・・・!」
(重病で、いつ死ぬかわからないろうおばあさんが、孫に会いたがってるのを、放ってはおけない・・・・・。)
瑞希お兄ちゃんのお父さんの話に、心が動かされてしまった。