彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)





「・・・あ・・・あ・・・あの・・・僕・・・・」
「胸糞わりぃ!!」





吐き捨てるように言うと、机にささったご自身の利き腕を引き抜くと、怒った表情のまま、私に背を向ける。






(瑞希お兄ちゃん!!)






声に出して呼ぼうとしたが、声が出ない。
明らかな敵意を感じてしまい、混乱してしまった。





「凛たん大丈夫か!?」
「凛ちゃん、怪我無かった!?平気!?」
「しっかりしろ、凛道!」
「凛助ぇ!!!」





駆け寄ってくる先輩達とは対照的に、住居スペースへと瑞希お兄ちゃんは消えていった。







(・・・・・・・なにあれ?)

怒ったの?

瑞希お兄ちゃん怒ったの?

僕、瑞希お兄ちゃんに怒られたの?

怒らせちゃったの?

嫌われちゃったの?

いやだ!嫌いにならないで!

『私』を嫌いにならないで!!

「ご、ごめんなさい!!」


「凛たん!?」
「ご・・・ごめんなさい、瑞希お兄ちゃん!ごめんなさい!!」







私に群がる先輩方を押しのけて立ち上がる。





早く謝らないと!

瑞希お兄ちゃんに謝らないと!

手遅れになる前に謝らないと!





「待て!!待て待て!凛たん!」
「やめなさい、凛ちゃん!」
「瑞希に何を謝るというんだ!?」





先輩達の手を振り払っていた時、突然強い力で引き寄せられる。





「凛助!!」





百鬼だった。





「凛助オメー、瑞希が何で怒ってるかわかってねぇのに謝る気か!?火に油を注ぎてぇのか!!?マジで嫌われるぞっ!!!」


(瑞希お兄ちゃんにマジで嫌われる・・・・・!?)

「そんなのやだぁ~~~~~~~~!!」





気づいた時には、ワーと泣いてた。
そんな私から、百鬼は静かに腕を離すと、肩をポンポンしてくれた。
モニカちゃんがすぐさま、きつく抱きしめてくれた。
獅子島さんが背中を何度もさすってくれた。
烈司さんは――――――――いつも瑞希お兄ちゃんがするように、よしよしと頭をなでてくれた。






「やだぁ~~~~!!嫌われるの、やだよぉ~~~~~!瑞希お兄ちゃんに嫌われたくないよぉ~~~~!!」






声に出したら止まらなくなり、しばらく私ワンワン泣いた。
烈司さんと、モニカちゃんと、獅子島さんと、百鬼に慰められながら、泣き続けたのだった。








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