無自覚なまま、愛を蓄えて。
あまり話すほどのエピソードが見当たらないな……。
あれだけ小さい頃一緒にいたはずなのに、なんだかあまり覚えてないや。
「えっと……」
ーピコン。
どうしようかと考えていると、机に置いてあったスマホが震えた。
スマホを取り、画面を見るとメッセージを受信している。
そこに、『お父さん』と名前が表示されていた。その名前を見て、ドクンと大きく心臓が跳ね上がる。
……そうだ。
梓くんと暴走族のことばかり考えていられないんだった。お父さんのことも考えないと……。
だけど、名前を見ているだけで心臓はドクドクと早く脈打ち、冷や汗がでてくる。
「優星?どうかした?」
真桜に名前を呼ばれて、はっと我に返る。
その途端に、周りの音がやけに大きく感じた。どうやら、周りが見えなくなるほど動揺していたらしい。
「う、ううん、なんでもない!」
「そう?」