無自覚なまま、愛を蓄えて。
私はメッセージの履歴を消し、スマホの電源をオフにした。今はお父さんから離れたい。
お父さんのことを、考えたくない。
「ごめんね。なんの話だっけ?」
気持ちを切り替えるようにして、私は真桜に話しかけた。
これからどうなるかなんて分からない。
だけど……今は、梓くんとの暮らしを楽しみたい。
たとえこの後どんな辛いことが待ってようと、今だけは……現実逃避させてください。
***
学校が終わり、バイトに向かう頃。
最近では習慣になりつつある梓くんの送り迎えに、気持ちが上がる。
「おまたせ。待った?」
「おう、お疲れ様。今来たとこだ。全然待ってないぞ」
学校ではあまり目立ちたくないので裏口に集合することになっていた。
裏口に着くといつも私より先に梓くんが待ってくれている。その事に嬉しくて、なんだかきゅ、と胸が苦しくなる。
梓くんと並んで歩くバイトまでの道のり。