無自覚なまま、愛を蓄えて。
「そうなの?」
勝手に話を進めてきて、ポカンとアホみたいな顔になる私。
あの……私のこと、忘れてませんか?
「梓くん……姫とか、暴走ってなんでしょうか……?」
話についていけなくて、思わず梓くんに尋ねる。袖を軽くつまみ、振り向かせようとした。
その時、なんだかビクッとしたような……。
「あー、それはだな……」
「え?何、梓説明してないの?俺ら暴走族のこと」
「……別に言う必要ねーと思ったからな。早乙女の件がなかったらここに連れてくる予定無かったし」
……そう、だったんだ。
まぁ、そうだよね。私が今ここにいること自体不思議なことだもん。
疎遠になっていた梓くんと一緒に暮らすことになって、しかもこんなふうに仲間を紹介してもらえて。
私の人生、この短期間で大きく変わった気がする。
「でも今は説明する必要あるだろ?梓の、大事な人みたいだからな」