無自覚なまま、愛を蓄えて。
だけどそんな私を止めるように、梓くんが後ろから抱きしめてくる。
ーードキンッ。
「梓くん?」
背中からほんのりと伝わる梓くんの温もりを感じながら、そっと腕に手を重ねた。
「もう少しだけ、時間をくれ。全部、解決したらお前に伝えたいことがある」
「……っ、わ、かった……」
耳元で囁くように言われた言葉。
ぎゅうっと強く、抱きしめられて。思考回路が一気に停止する。
私に、こんな幸せな時間があっていいのだろうか。
彼氏でもない、ただの好きな人にこんなふうに抱きしめられて。
できることなら、このまま時間が止まって欲しかった。
「それじゃあ行くか」
「うん」
梓くんが私から離れていく。その事に名残惜しさを感じた。
2人並んで部屋を出る。
梓くん……私に伝えたいことってなんですか?
私も、あなたに伝えたいことがあるんです。
いつか……あなたに“好き”の2文字を伝えてもいいですか……?