無自覚なまま、愛を蓄えて。
「へ?」
前を見ながら話す梓くん。
いつもなら私の目を見て話すのに。なんか寂しい。
「ほら、前に乗った時、大変だったろ?それにもう乗りたくないって……」
「あ、ああ!バイクね!私は大丈夫だよ。あの時はほら……ちょっといろいろあったから混乱してただけで……。乗りたくないわけじゃないの」
今思えば、あの日から梓くんとの関係が再開した。あの日、早乙女くんから追いかけられてなければ、今こうして梓くんの隣にいなかった。
お父さんから家を追い出されなければ、こうして一緒に暮らすことも無かった。
梓くんの隣にいられるのは小さな奇跡が重なって、大きな奇跡になったから。
「そうだったのか?」
「そうだよ。だからあの時はごめんね?今は……梓くんの後ろに乗りたいって心から思ってる」
あの時の気持ちを取り消したくて、素直に今の気持ちを伝えた。
だけどあとからすごく恥ずかしくなってきて。