無自覚なまま、愛を蓄えて。

JOKERの仲間が半分以上やられた頃。


理人くんが、口を拭いながらそう言った。おそらく喧嘩中に口の中を切ったのだろう。


月明かりに照らされた時、かすかに赤い血が見えた。


理人くん、なんだかんだ言って1番楽しんでる気がする……。他のみんなもまだまだやり足りないみたいな顔してるし……。



「やるねぇ、ROSEみなさん。うちの仲間、ほとんどやられちまったよ」


「全国NO.1を名乗ってんのに、俺らに負けるとはな。JOKERも落ちたもんだな」



梓くんは、挑発させるように辺りを見渡す。その様子をドキドキしながら見ていると、後ろからガサガサと変な音が聞こえた。


ハッとして後ろを振り向いた。


だけどそれと同時に口元に何かが抑えられ、段々と意識が遠のいていく。



「梓、くん……」



油断していた。


こんなふうにして誰かに狙われるなんて。今になって実感した。
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