無自覚なまま、愛を蓄えて。
「じゃあ、大事な“幼なじみ”は俺たちが預かっておくぜ。総長様」
「優星っ!!」
朦朧とする意識の中、誰かに抱えられながら茂みから出たのは覚えていた。
梓くんが焦ったような声で私の名前を呼ぶ声も聞こえて。必死で抵抗しようとしたけど。
「優星を返せ!」
「無理だな。お前らを潰すまではこの幼なじみを預からせてもらうよ。お前から大事なものを奪ったらいったいどうなるんだろうなぁ?」
「……うっ……」
目をつぶろうとした瞬間、何かが私の頬を撫でる。その仕草がなんだか気持ち悪くて。
声を出してしまった。
「やめろ!優星に触るな!」
「こいつを返して欲しければ、明日までに俺たちがいるアジトまで来い。そこで決戦をしてやる」
……何かを話しているけど、あまりよく聞こえない。
梓くん……ごめんね。迷惑ばかりかけて。
私、梓くんのこと信じてるから。だから……お願い。