無自覚なまま、愛を蓄えて。

私がこの場にいること自体本当に不思議なくらい、現実味を帯びない時間が流れていた。



「それじゃあ、コイツは一体なんなんだ?お前の姫候補の仲間じゃねぇのか?」


「きゃ!」



JOKERの仲間に無理やり前に押し倒され、よろめいてしまう。



「優星っ!」


「おっと。大丈夫かい?優星ちゃん?」



転ぶ……と思って目を瞑ったけど、それを誰かが阻止した。その“誰か”がすぐに声でわかった。


梓くんが手を伸ばそうとしたけど、それを阻止して早乙女くんが私を支えた。


1番近くにいるのが早乙女くんと認識した瞬間、気持ち悪くてすぐに立ち直る。



「そんなに俺の事を嫌わなくてもいいのに。ロープで縛られてるのに、動きは優秀だね」



私の動きを見てケラケラと笑う。


不気味な笑い声が建物内に響く。



「あんなことしたんだから、俺にもっと甘えればいいのに」


「なっ……!」



ひとしきり笑ったあと、梓くんに聞こえるくらいの声の大きさで話す早乙女くん。
< 155 / 242 >

この作品をシェア

pagetop