無自覚なまま、愛を蓄えて。

抑える人の力が強すぎて、身動きが取れないのだ。



「……動くなって言ってんだろうが。痛い目見たいのか?」


「……ひっ……」



動いてることがバレてしまい、怖い声で私を脅す。この声は早乙女くんではないことを知りながらも、怖いものは変わらなかった。



「うがぁ!」


「梓くん!」



私を縛り付けているヤツと睨み合っていると、梓くんの悲鳴が聞こえた。


声のした方に顔を向けると梓くんがみぞおちを抑えてうずくまっている。周りには鉄パイプを持ったJOKERの仲間が数人囲っていた。



「ははっ。ROSEの総長も情けねぇなぁ。こんなんでやられるとか、姫も守れねぇじゃん」



梓くんの名前を呼ぶと、どこからか早乙女くんの声が聞こえた。


どうやら早乙女くんもこの交戦に参戦しているらしく、いつの間にか仲間に紛れ込んでいた。


おかげで、早乙女くんがどこにいるのか分からない。
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