無自覚なまま、愛を蓄えて。

恐ろしい顔に息を止めて見てしまう。


後ろの方で梓くんが苦しんでるのに私は何も出来ないなんて。


……悔しい。悔しい、悔しい!



「……優星ちゃん、さぁ俺のものになれよ。そして、もっともっと野郎を悔しがらせてやろう」



再び悪魔のような笑い声が響き渡る。


身動きが取れない私は涙を流すことしか出来ない。


早乙女くんが怖くて、逃げたいのに。


……逃げられない。


早乙女くんの顔がだんだん近づき、鼻と鼻が触れそうなほど近づいた。



「近くで見るとますます可愛いな〜」


「や、めろ!これ以上優星に……」



梓くんは痛みを堪えてなんとか立ち上がった。顔をゆがめて私を見ている。


そんな、顔……しないで。


梓くんのそんな姿見ることなく日常を過ごしたかった。


私の……私のせいで、みんなは……。



「ふっ……くっ、やめ、て……」



最後の最後まで抵抗だけはしようと体を横に動かす。
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