無自覚なまま、愛を蓄えて。

「ふはは。いい眺めだ。これでお前も終わりだ……」



ーバンッ!


涙を流しながら抵抗してると、早乙女くんの言葉がドアの開いた音で途切れる。



「私の娘から離れろ!!」



聞き覚えのある声にハッとして顔を上げた。



「おと、う、さん……?」


「ああ?誰だ、てめぇは!?」



私はその人物を見て驚く。


だってそこには、ここにいるはずもないお父さんがいたから。


なんで……と、目を見開き驚いていると、お父さんに気づいた早乙女くんが、飛びかかる。



「危ない!」



思わず叫んでしまったけど、お父さんはみをひるがえして早乙女くんを避ける。


その動きを見て、ますます訳が分からなくなる私。



「……ようやく来ましたか。ギリギリですね」


「申し訳ない。娘のために、こんなことまで……」



お父さんに驚いていると、梓くんがゆっくりと起き上がる。


そんな梓くんにお父さんが手を差し出し、勢いをつけて立ち上がった。
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