無自覚なまま、愛を蓄えて。
てっきり俺の事を忘れられていると思っていたのでこの展開は予想外だった。
わけも分からず胸ぐらを掴まれたまま、優星の親父に揺さぶられる。
「これが落ち着いてられるかよ!この人さらいが!人の娘攫って楽しいか!!優星はあの日以来連絡よこさないわ、電話は無視するわで気が気じゃなかったんだぞ!」
大声でまくし立てる父親は顔を真っ赤にして怒っていた。
これは酔っている時の怒り方じゃなくてちゃんと意識がある時の怒り方。
その姿を見てほっとしたのは言うまでもない。
……優星は、ちゃんと愛されていたのだと。
「す、すみません……。気が気じゃなかったって……つまり、優星を心から心配していたというわけですね?」
「……は?そ、そんなわけがないだろう……」
とりあえず落ち着かせようと声を出すと、俺の言葉にオロオロし始める。
どうやら無意識に言っていたようで、図星を言われたのか急に否定する。