無自覚なまま、愛を蓄えて。
恐怖の出会い
梓くんとバイト先で会ってから1週間が過ぎた。あの日から特に何かが起きるわけでもなく、静かに日常が過ぎていった。
「ねぇ聞いた?今日あの“冷酷プリンス”が学校に来てるらしいよ」
「えー?本当に!?」
ある日のお昼休み。
私はお弁当を食べた後にトイレに行こうと廊下を歩いていた。いつものような昼休みの雰囲気の学校は、ザワザワと騒がしい。
だけど、時折私の横を通り過ぎる女子生徒の会話が耳に入り、ん?と首を傾げる。そういえば今日は女子生徒がなんだか朝からソワソワしていたような。
それに、さっきの会話、いま“冷酷プリンス”って言った?
……まさか、ね?
嫌な予感が頭をよぎったけど考えないようにして廊下を歩く。それにしても……。
「……気が重い……」
トイレの個室で思わず大きなため息をついてしまった。今日は朝からずっと気分が重くて、時間が過ぎるのが遅く感じた。
真桜からもずっと朝から“合コン”の話を聞かされていて心が休まる気がしなかった。