無自覚なまま、愛を蓄えて。
お父さんからそっと離れ、頭を深く深く下げる。涙が止まらなくて、何度も何度も拭う。
「……馬鹿っ。お前は私の大事な娘だ。そんなお願いされなくても、一生私の大切な娘だ」
「お父さん……」
大切な、娘……。
その言葉が、どれかだけ私の心に響いたか分からない。胸が熱くなり、何度も何度も心の中でその言葉が繰り返される。
きっとずっとその言葉を望んでいた。
いつか、言われたいと思っていた言葉だ。
「東郷くん、ここに連れてきてくれてありがとう」
「いえ。とんでもないです。俺はただ少しお手伝いをしたまでです。さぁ、早くここから立ち去りましょう。あと少ししたら警察がきますからね」
「け、警察!?」
お父さんが梓くんにお礼を言った。
そのことに梓くんは一件落着みたいな顔をして、最後にとんでもない言葉を言い切った。
そのことの重大さに気付いたお父さんは声をひっくり返して驚いている。