無自覚なまま、愛を蓄えて。

……それは一理ある。


ちづは人のこと見ていないようでよく見ているやつだ。仲間の小さな変化を見逃さない。


それは良いことでもあるが、悪いことでもある。


気づいて欲しくないところも気づいてしまうのが悪いところ。


アイツらといる時は無心な表情を貫き通すか。



「……あ、噂をすれば。ほら」


「ん?」



ちづへの対策を考えていると理人がおもむろに遠くを指さす。


俺は反射的に顔を上げ、指さす方向へ視線を向けた。その瞬間、ドクンと心臓が大きく跳ね上がる。


視線の先には……優星がいた。


いつも通り校則をきっちり守った制服の着こなし。堂々と学校へ向かう姿は元気そうで安心した。
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