無自覚なまま、愛を蓄えて。
「いった!梓くん、今殴ったね!?」
「おい、お前ら少しは静かにしろよ」
反射的にちづを殴っていた俺は、理人の声にはっと我に返る。
優星のことになるとすぐムキになるのは俺の悪い癖だとここ最近わかった。だけど、気持ちが抑えられなくなって、こうして手が出てしまう。
ちづは、今朝の理人のように涙目になり、殴られたところをさすっていた。
「わりー。ついムキになっちまった」
このままではダメだと思い、ちづに素直に謝る。
「別にいいけど……。俺もごめん」
素直に謝った俺に驚いたのかちづは目を見開き、その後罰が悪そうにした。
「なぁ、梓。そろそろ行かなくていいのか?優星ちゃんに置いてかれるぞ?」
微妙な空気を遮ったのは理人だった。
俺は時計を見て、慌てて屋上から出る。
「やべー。優星に置いてかれる!」
「待ってよ、梓くん!俺も行く!」