無自覚なまま、愛を蓄えて。

ーキーンコーンカーンコーン……。


トイレで散々悩んでいると遠くから昼休み終了5分前のチャイムが聞こえた。次は移動教室だからそろそろでないと……。


答えが出ないまま私は重い腰を上げ、トイレから出た。


……だけど。



「キャー!なんで“冷酷プリンス様”がここにいるの!?しかも、ROSE(ローズ)のメンバーも揃ってるし!」


「やば!実物めちゃくちゃかっこいいんですけど♡」



廊下にはたくさんの人だかりができていて、女子の悲鳴で埋め尽くされていた。


……な、なんなんだろう……。


冷酷プリンス様?ROSE?


なんか、嫌な予感が……。人混みの中、隙間を縫って教室にそろそろとひっそり戻ろうとした。


「……ぶっ!す、すみません……あっ」



前をよく見ずに歩いていたら、誰かの背中にぶつかり、慌てて顔を上げる。だけどそれがいけなかった。


私が謝ったのと同時に相手も後ろを振り向いた。


その瞬間にサーッと血の気が引いていくのを感じた。
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