無自覚なまま、愛を蓄えて。
悩みがあっても誰かに相談することが下手くそで。真桜にでさえ滅多に相談しない。
ましてや梓くんから……キ、キスされたっていう相談をしてもマスターから話を聞かれて終わるだろう。
それに、こんな恋バナを自分からすることなんてないから心臓が持ちそうにない。
「待って」
「マスター?」
テーブルの片付けをしようとレジから出たのにそれをマスターに引き止めらた。
私はびっくりして思わず立ち止まる。
「ちょっとだけでいいからお話しない?ちょうどお客さんもいないし。そこのカウンター座ってちょうだいな」
「………でも」
「いいから、いいから」
にっこり笑いながらマスターは私に話しかける。
躊躇う私をグイグイとカウンターまで引っ張っていく。仕事中なのに、と思いつつ、マスターに断りきれなかった私はそのまま椅子に座った。
「優星ちゃん、コーヒーって飲める?」
「いや、飲めないです……」