無自覚なまま、愛を蓄えて。

カウンター越しにマスターはコーヒーの準備をする。


だけど、コーヒーが飲めない私は首を振った。コーヒーの匂いは好きなんだけどまだ苦くて飲めないんだ。



「そうなのね。それじゃあお砂糖入れて甘くしましょう。それなら大丈夫よね？」


「は、はい」



砂糖入れるなら……と頷く私。


しばらくすると湯が沸き上がる。


そっと湯の入ったポットを持ち上げるとコーヒーの元の上に、お湯をかけ始める。


すると、コーヒーのいい匂いがカフェ全体に広がった。私はそっと深呼吸し、この匂いを思いっきり吸い込む。


……ああ、落ち着くな……。



「はい。優星ちゃん専用のコーヒーよ。召し上がれ」


「ありがとうございます！」



匂いを楽しんでると目の前にひとつの白いカップがカチャン、という音を立てて置かれた。


普通のコーヒーとは違ったカフェオレのような色をしていた。飲みやすいように甘くなったコーヒー。


私は遠慮がちにカップを持ち上げると、口につけ、1口すする。